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2019年3月 BLOOMING EASTインタビューリサーチ「SOWING EAST」
<第2回>Ho Dinhさん

東東京で暮らす外国人の方にお話をうかがう「SOWING EAST」。第2回はベトナム人のディンさんです。技能実習生*として来日して2年が過ぎました。内装の仕事にも慣れ、充実した毎日を過ごしています。日本に来たことで成長したと語るディンさん。料理もベトナムでは作ったことがありませんでしたが、今では自炊はもちろん、お弁当も作っています。滞在期間は3年間のため、残りの日々を精一杯仕事し、たくさんのことを吸収してベトナムに帰りたいと話します。今回はそんな24歳のディンさんに、ご自宅にお招きいただき、お話をうかがいました。

*日本の企業などで技術、技能を身につけるために来日している外国人。現在技能実習生として来日している外国人のなかで、ベトナム人がもっとも多い。

文=吉澤弥重子(ひらがなネット株式会社
写真=Mao Yamamoto(1,3,5,8,9枚目)


↑休日はベトナム人の友人と過ごします。左がディンさん。(ディンさん提供)

内装の仕事に興味を持ち、技能実習生として日本に来ました。

 私は5人兄弟の末っ子として生まれました。1番上の兄が12年前に技能実習生として日本に来たので、技能実習生の制度は知っていました。日本に行きたいと思ったのは、日本が大好きな家族の影響もありましたが、内装の仕事を知ったからです。
 私はベトナムで小中高校生活*を過ごした後、電子の専門学校で2年間勉強をしました。20歳のころに、日本で内装を勉強してきた先輩たちがホテルで働いているのを見学して、内装という仕事を知りました。とても興味を持ち、自分も内装の仕事で技能実習生として日本へ行こうと思いました。
 それからまず日本語の学校で1年間勉強をし、内装のこともベトナムの会社で6か月間勉強しました。技能実習生は、職業は決められますが、会社を選ぶことができません。技能実習生になるために、日本語を勉強している人はたくさんいます。面接をしても、選ばれるのは10人中2人程度と、とても厳しいです。面接は日本語で受けなければならず、仕事の言葉も日本語でテストされます。ですから一生懸命に勉強しました。実は私が日本に来て1週間後に、姉も技能実習生として大阪の会社に入りました。

*ベトナムでは小学校は5年間、中学は4年間、高校は3年間。18歳で高校を卒業する。

日本語は難しく、日本に来たばかりのときは大変でした。

 日本に来て最初の1か月間は、研修施設で日本語などの勉強をします。それが終わってから会社に入りました。私の会社には7人の技能実習生がいて、全員がベトナム人です。壁紙専門の人は40人いて、チームに分かれています。私のチームは5人で、ベトナム人は私だけです。
 仕事の現場では最初、日本人の同僚の言ったことがわからなくて怒られることがたくさんありました。そういうときは日本語の勉強もやる気が出ないし、“日本人はいやだ、現場の皆さんは心が狭い”と思うこともありました。怒られると、黙るしかありません。本当は心の中に言いたいことも説明したいこともありますが、怒る言葉を日本語に変換していると、時間がかかりますから。しかし、社長と面談したときに「先輩が厳しくしているのは、新入社員に仕事を覚えてもらうため、仕事を失敗しないためだから」とアドバイスをもらいました。それからは「頑張ります!」という気持ちで仕事をしています。
 生活面ではお店に行っても注文ができないので、すごく困りました。日本語学校の授業は教科書が中心で、会話はあまりしていません。聞くことと会話が難しく、困っていると会社の人が面倒を見てくれました。
 仕事から帰ると体がだるくて疲れていますが、寝る前に1時間勉強していました。明日また現場で怒られないように、貼り方を想像したり、専門用語を覚えたりするようにしました。今は教科書の勉強はしません。YouTubeやテレビを見て聞きながら、話し方や発音の真似をしています。


↑ひらがなネット株式会社が定期的に開催している散歩のイベントに参加しているディンさん。サッポロビール博物館にて。(ひらがなネット株式会社提供)

内装の仕事は楽しいです。

 親方はいつも壁紙の貼り方を、教えてもらった通りにすることが大切だと言います。最初のころ私は「こう貼ったら早いと思うのですが」と、アイディアをいろいろ出しました。でも親方からは「アイディアはいらない。教わったことをちゃんと守らないとだめだ」と言われました。しっかり、貼り方のルールを守る。それだけ、それが大切なんです。なので今度は、私が後輩たちに「だまって親方のするとおりにやる。それが一番良い。ラクをしないで、きっちりやること」とアドバイスしています。内装の仕事は難しいですが、楽しいです。

食事は自分で作り、お弁当も持っていきます。

 出勤時間は日によって違いますが、だいたい6時半くらいに家を出ます。朝礼の30分前には現場に着くように言われています。日本はラッシュアワーがあるので、避けるためにも早く行った方が良いと思っています。会社は週に1回、ミーティングをするために行きます。仕事の終業時間は現場によって変わりますが、忙しい現場では残業があったり、日曜日も仕事をすることがあります。休日は基本的には、日曜日だけです。
 食事は自分で作ります。お弁当も肉や野菜炒めを作って持っていきます。ベトナム人は外食する人が多く、お弁当を作る人は少ないです。私は飲みに行くのもすごく好きです。昔は友だちと週に3回くらい飲みに行きましたが、今は次の日に仕事があるときは控えて土曜日の夜に飲むくらいです。休日は友だちと会ったり、飲みに行ったりします。日本語の勉強もしたいので、日本人と出会えそうなイベントがあると、できるだけ参加したいと思っています。
 お正月は地方に住んでいるベトナム人の友だち20人くらいと過ごしました。技能実習生も留学生もいます。私が東京に住んでいるので、案内役をしました。日本の食べ物を食べたり、秋葉原でパソコンや携帯電話を買ったりしました。東京にあるベトナム語でカラオケが楽しめる店にも行き、私は日本語で「翼をください」を歌いました。インターネットで聞いて、歌いたいと思ったので覚えました。今回はお台場、横浜、秋葉原、浅草、銀座、渋谷へ行きましたが、東京で遊ぶにはお金がかかりますね。

夢はベトナムで内装の会社を起業すること。

 今年の10月で来日して3年になるので、ベトナムに帰る予定です。日本に来る前からの私の夢は、壁紙の材料を日本から輸入して、自分の会社を作ることです。ベトナムでは一般的に壁紙は貼らずに、ペンキや石の壁です。ホテルや高級マンションでは壁紙を貼るので、そういうところをお客さまにして、会社を大きくしたいです。ベトナムでもいつか一般的に壁紙を使うようになると思っています。
 先輩たちには日本に4年~5年いる人もいて、良い仕事があればずっと同じ仕事を続けています。日本のお金はベトナムの4倍くらいの価値があるので、日本で10年働いてベトナムに帰ればちょっとしたお金持ちです。私は若いのでたくさんの経験を積みたいです。ベトナムに帰れば、壁紙の会社で営業もできるし、自分の店も持てます。日本で毎日壁紙を貼って、ずっと同じことをするのは私の性格には合わないです。


↑散歩のイベントで訪れた旧朝倉家住宅。黄色い旗を持つのがディンさん。(ひらがなネット株式会社提供)

日本に来たことが、良い成長方法だと思っています。

 日本で学んだことをしっかり持って帰れば、後輩たちに技術を教えて一緒に仕事をしていけると思っています。経済的理由で日本に行けない後輩は多いです。日本に来て仕事を教えてもらったことや、生活面で多くのことを体験できたのは、私にとってとても良い成長方法だったと思います。ベトナムにいたときはお母さんが料理も洗濯も何でもやってくれていました。そしていつも、お小遣いをもらっていました。日本に来て仕事をする。生活をする。貯金をする。こうしたことができるようになったことが、成長した証だと思っています。
 日本の方たちはいろいろ手伝ってくれて感謝しています。両親も兄弟も、私の日本での生活を応援してくれています。みんな日本が好きですから。お母さんに電話をすると「おはよう」や「おやすみ」は日本語で言います。2年が過ぎた今では仕事や言葉にもだいぶ慣れました。困ることも少なくなりました。ベトナムに帰るまで現場で一生懸命働きたいです。仕事をやり切る。それが一番大切だと思っています。それから日本語ももっと勉強したいです。

一緒に働く外国人と、たくさん話してください。

 技能実習生も含め日本で働く外国人は、好きなことや興味の持てる仕事をできると良いなと思います。いろんな人がいます。なまける人もいるし、悪い人もいます。一生懸命働く人もいます。大事なことはやる気。やる気が出ないと、何もできないと思います。日本の方は外国人に話しかけてみてください。何が好きですか、何がしたいですか。私たちもやりたくないことをすることは、ストレスがたまります。外国人と一緒に働きたいと思ってくれるのなら、話をすることで互いの理解が深まると思います。


↑取材後、スタッフ全員でベトナム料理をいただきました。

Cooking Vietnam Food with Dihn

日本に来てから料理をするようになったというディンさんに、BLOOMING EAST女性スタッフがベトナム料理を教えていただきました。作ったのは、ディンさん流チャーヨー(揚げ春巻き)と牛肉のフォー(ライスヌードル)の2品。調味料の胡椒とニョクマムは、ディンさんのお母さんが送ってくれたもの、胡椒は胡椒農家をされているディンさんのお父さんの畑で育ったものを使っています。

東東京でのサーヴェイ(調査)先を募集しています

BLOOMING EAST×コムアイ サーヴェイ(調査)は、これからも続きます。
今後も東東京を軸にして、多様な価値観や文化と出会いながらプロジェクトを進めていくにあたって、お話を伺わせていただける方や訪問場所についての情報を募集しています。

現在東京に住まわれている(または過去に住んでいたことがある)外国にルーツを持つ方、様々な文化や背景を持つコミュニティ、外国籍の方々と一緒にプロジェクトを実践されている方、関連するイベント情報など、ぜひメール(info@toppingeast.com)にてお寄せください。

みなさまからのご連絡をお待ちしております。

If you have any information of foreigner communities, restaurants and parties in east side Tokyo, please share us by email(info@toppingeast.com).Thank you.

请提供东东京的外国人社区,餐厅,聚会的信息,送我们的email(info@toppingeast.com)。谢谢您的合作。

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