【インターンレポート】『隅田側に立つ』を通して考えた、私にとっての「公共性と公益性」渡瀬明日香
NPO法人トッピングイーストでは、インターン生に「現在自分が考える”公共性”と”公益性”」をテーマにレポートを書いていただきました。今回は2019年5月よりインターンに参加してくれている最長期メンバー・渡瀬明日香さんのレポートです。渡瀬さんは特に『隅田川怒涛』ではリサーチや現場運営、『隅田側に立つ』ではメンバー紹介パネル・経理・記録(アンケート、報告書作成、など)を担当してくれました。
私は、今回の展示企画『隅田側に立つ』に関わるまで、「公共のもの」に対してあまり意識を向けたことがなかった。道路や公園など、あまりにも暮らしに馴染みすぎて、ありがたみを感じることがなかったからかもしれない。
「公共性」「公益性」とは何かと聞かれると、私は「社会貢献」と答える。ただ、「社会貢献」と考えると萎縮してしまい、社会に貢献できることがないと思っていた。また、社会問題に対してどのように関わっていったら良いのか方法も分からず、そのことを理由に考えることを放棄していた部分もあった。しかし展示やトークを通じて、隅田川周辺地域の活動に熱心に取り組む方たちの姿勢を見て、今の社会の仕組みに疑問を持つようになった。そして、誰かが有事のときに頼れる場所をいつでも開放したい、誰かの強い思いを一緒に形にできる場・雰囲気作りをしたいなど、自分なりに「こんな社会にしたい」という思いを自然と持つようになった。「公共」とは誰かが「こんな社会になってほしい」という強い思いを持って行動することで出来上がっていくものであって、そういった思いや行動がなくなると、社会が回らなくなってしまうことに気がついた。そして「公共性」「公益性」を生み出し後世に残していくためには、一度限りの行動ではなく、その行動を継続・発展させていくことが必要不可欠であり、また維持する努力と忍耐力も求められることも実感した。
『隅田側に立つ』は、自分たちの視点から見て考えた隅田川や地域を、地域の方をはじめとする来場者の方たちと共有し、自分の身の回りのことについて改めて考え直すきっかけをつくるというコンセプトを持った展示だった。私は「よりどころ」という言葉をテーマに、隅田川の地域について考えてきた。「よりどころ」にたどり着いたのは、自分自身が東京に気軽に頼れる場所が見つからず、少し息苦しいと感じていたからであり、「東京はとくに心を切り替えられる、ほっとできる場所が必要だ」と思ったことがきっかけだった。きっと私が見つけられていないだけで、既に東京に「よりどころ」がある人もいるだろう。それでも私と同じような心境の人がたくさんいるのではないかと考え、そういった人たちに自分の考えを伝えたい、これからの「よりどころ」について一緒に考えていきたいと思い、展示に取り組んできた。社会のことを考えることは、他人のことを考え理解することであり、それはとても難しいことである。社会問題に日頃から着目しておくことも重要だが、その前に自分自身を見つめ直し、自分が生きやすい社会はどんなものか、自分が求めるものは何なのかから考えることが大事なのではないだろうか。個人が「こうしたい」という強い思いで動けば、そこに賛同者が集まりひとつの輪ができる。そこから発展、継続、維持をすることでやがて人々の役に立つものとなり、そこで初めて「公益性のあるもの」と言えるのではないかと私は考える。
考えるきっかけを作ることは、これから先もずっと継続しなければ、人の役に立つもの、「公共性」「公益性」のあるものにならない。一度限りで終わらせず、この展示に関わった私たちは、今後も形を変えながらでも考え・発信していくことを継続させていかねばならないのだ。この行動が人々の生活の一部となり、未来の社会を変える種となったとき、『隅田側に立つ』は「公益性」のあるものと胸を張って言えるのだろう。
↑渡瀬さん(写真中央)は『隅田側に立つ』で「よりどころ×隅田川」をテーマにトークを実施。ゲストとして、荘司美幸さん(写真左、有限会社 ThreeDo’s 酒場はりや 店主)、井奈波康貴さん(写真右、東向島珈琲 店主)にご登壇いただきました。
↑渡瀬さんも担当した「メンバー紹介パネル」。インターンから情報を集め、デザイナーと相談して作成しました。