2017年4月 BLOOMING EAST オープンキャンパス レポート
文:藤井さゆり(BLOOMING EAST 制作)
2017年3月3日(金)—3月5日(日)の3日間に渡って、TOPPING EASTの拠点で「BLOOMING EAST オープンキャンパス」と名付けたイベントが実施されました。
このイベントは、BLOOMING EASTが2016年度に行ってきた活動のプロセスを公開し、プロジェクトに関わるメンバーが様々な視点から活動を振り返り、さらには音楽家のコトリンゴがプロデュースした「街のサウンドトラック」を手に街へ出かけ、東東京というキャンパスを体験するというものでした。BLOOMING EASTって何をしているのか詳しくはわからないけどなんだか興味がある、そんな人へ向けたイベントを行いました。
BLOOMING EAST(以下、ブルーミング)は、公共空間における音の展開可能性を探るプロジェクト。日常の景色のなかに音が差し込まれることで、空間の見え方、過ごし方、体験が変わる、そんな状況が生み出されることを目指し、2015年からスタートしました。
音の展開可能性を探るとは、さまざまな可能性のアイディアを出発点としながらも、リサーチの中から新たなアイディアが生まれたり、実験や検証を繰り返す中で可能性が広がったり・・・関わるメンバーはブルーミングが目指す状況は共有していますが、それを達成する為の方法論や手法を持ち合わせているわけではありません。みなで考え、実践しながら進めていくプロジェクトなのです。
2016年度は音楽家のコトリンゴをゲストアーティストに迎え、学生や一般参加者らとともに、ささやかなアイディアから、実現できそうなアイディアまで、いろいろな意見を出し合いながら、公共空間での音のつくりかた・つかいかたを探ってきました。
最初の話し合いでは、いろんなアイディアや考えが出ましたが、そもそもいろいろな可能性をもっておく為にはどうするべきか、いくつもあるアイディア候補をどのように選んでいくのか、といった話題へ発展し、音に関わるリサーチの手法自体をさまざまなバリエーションで考えることに。
そして音を東東京のいろいろな場所で採集して、それらを聞いた後に現地へ赴いたり、気になった音を録音/再生ではない形で再現してみたり、音のない風景映像に音をつけてみたり、映像につけた音を撮影地で聞いてみたり・・・このような紆余曲折のプロセスを経て、日常の景色が少し変わる状況をつくりだす音になりそうな可能性の種を見つけ出しました。
そして、このわかりにくいプロジェクトのプロセスを公開することで少しでも多くの人に知ってもらい、プロジェクトに興味を持ってくれる人に出会える場をつくりました。それが「BLOOMING EAST オープンキャンパス」です。
一般的にオープンキャンパスは、学校の施設を公開し、模擬講義や研究室の活動紹介やさまざまイベントを実施し、関心のある人に、より学校を知ってもらう為のイベントです。ブルーミングのオープンキャンパスでも、活動のプロセスを公開するだけでなく、プロジェクトに関わるメンバーがさまざまな視点から活動を振り返るトーク、さらには半年間のフィールドワークから生まれたコトリンゴプロデュースの「街のサウンドトラック」を持って、「東東京の街」というブルーミングのキャンパスを体験するプログラムも実施しました。
まずこれまでのプロセスを公開するにあたって、記録として参加していた東彩織がテキストを書き起こしました。とても丁寧に整理されたテキストは、もちろんオープンキャンパスの参加者へ向けられたものでしたが、プロジェクトメンバーがブルーミングを改めて捉え直し、客観的な視点を持つ機会にもなりました。また今回のプロジェクトは関わるメンバーによって、見え方が異なっていました。そんなさまざまなメンバーによるトークででてきたキーワードや言葉たちは、このプロジェクトの輪郭を浮かび上がらせるものでした。さらに来場してくれた方々からは、「近くに住んでいて興味はあったけれど、今日でやっとプロジェクトの概要がわかった」、「面白そうだから、今後は自分がプロジェクトに参加してみたい」、「街のサウンドトラックを聞きながら歩いていたら、いつもの風景をまるで違って見えた」などの声をいただくことができました。プロジェクトメンバー含め、拠点に集まった人たちそれぞれが、音の展開可能性を改めて感じ、次の一歩を進める気持ちが高まったのではないかと思います。
BLOOMING EASTは引き続きプロジェクトを進めていきます。
次はどんな音をつくり、どんな状況をつくりだせるでしょうか。
ともに種をまき、水をやり、さまざまな場へ「音の花」を咲かせていく、そんな人たちと出会えることを楽しみにしています。